SDGs6の問題点をわかりやすく解説する安全な水とトイレの現状ガイド

蛇口をひねれば当たり前のように出てくる水。トイレを使い、手を洗い、飲み水を口にする。私たちの日常では意識することすら少ないこれらの行為が、世界では「命がけ」になっている地域が数多く存在します。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、この深刻な格差を解消することを目指しています。しかし、達成への道のりには数多くの問題点が横たわっているのが現状です。
この記事では、これまで環境・国際協力分野の情報をまとめてきた経験をもとに、SDGs6が抱える具体的な問題点を、最新データと共に整理していきます。
この記事で学べること
- 約22億人が安全な飲料水を利用できず、世界の4人に1人が水の問題を抱えている。
- 約34億人が衛生的なトイレを使えず、これは世界人口のほぼ半分に相当する。
- 毎年約44万人の5歳未満児が下痢で命を落としている深刻な現実がある。
- 日本も水道インフラの老朽化という「先進国ならではの課題」を抱えている。
- 個人でもできる節水や寄付など、今すぐ始められる行動がある。
SDGs6「安全な水とトイレを世界中に」とは何か
SDGs6は、2030年までに「すべての人々が安全な水と衛生施設を利用できるようにする」ことを目標にしています。
ここで重要なのが「安全に管理された」という言葉です。単に水があればよい、トイレがあればよいという話ではありません。汚染されていない飲み水と、排泄物が適切に処理される衛生設備の両方が求められているのです。
この目標には、8つの具体的なターゲットが設定されています。
SDGs6の主なターゲット
SDGsの全体像を改めて確認したい方は、SDGs17の目標の一覧とわかりやすい解説もあわせて読むと理解が深まります。
世界の現状を示す衝撃的なデータ

問題点を語る前に、まず「現実」を数字で見てみましょう。
数字は静かに、しかし確実に事態の深刻さを物語っています。
約22億人が安全に管理された飲料水を利用できません。これは世界人口のおよそ4人に1人にあたります。
さらに衝撃的なのがトイレの状況です。約34億人が衛生的なトイレを使えず、これは世界人口のほぼ半分という規模です。
そのなかでも、屋外で排泄をせざるを得ない人が約3億5,400万人。川や湖などの処理されていない地表水をそのまま飲んでいる人は約1億4,400万人にのぼります。
自宅で水と石けんを使った手洗いができない人は約30億人。コロナ禍で「手洗いの大切さ」が叫ばれましたが、その基本すらできない環境の人がこれほど多いのです。
SDGs6が抱える4つの主な問題点

では、なぜこれほどの格差が生まれ、解消が進まないのでしょうか。問題点を4つのカテゴリーに整理してみます。
安全な飲み水へのアクセス不足
最も根本的な問題が、飲み水そのものへのアクセスです。
水道インフラが整備されていない地域では、川や湖、水たまりの汚染された水をそのまま飲むしかありません。上下水道設備がないため、汚染された地下水や表流水を処理せずに口にしているのです。
特に基本的な飲み水すら確保できない約7億8,500万人のうち、その約90%がサハラ以南アフリカ、東・東南アジア、中央・南アジアに集中しています。地域による偏りが非常に大きいのが特徴です。
衛生的なトイレと衛生設備の不足
トイレの問題は、単なる不便さの話ではありません。
トイレがなく屋外排泄が日常的に行われている地域では、排泄物が適切に処理されないため、生活環境や水源が汚染されていきます。汚染された水を飲む、その水がまた病気を広げる。この悪循環が問題の核心です。
家庭だけでなく、学校や医療施設にも手洗い場や石けんが備えられていない例が多く、感染症のリスクを高めています。
水質汚染と排水管理の不備
3つ目の問題は、水を「汚してしまう」構造にあります。
家庭や工場からの排水が無処理のまま川や湖に流され、汚染が進行しています。さらに農業由来の肥料や農薬、有害物質が地下に浸透し、地下水を汚染するケースも少なくありません。
本来なら排水処理施設や下水処理システムで浄化すべきですが、その整備には多額の資金と技術が必要です。これらが不足している地域では、汚染が汚染を呼ぶ状況が続いています。
水不足と気候変動の影響
そして近年、深刻さを増しているのが気候変動の影響です。
異常気象や干ばつによって水不足が悪化し、農業生産や食料供給にも打撃を与えています。水の問題は単独で存在するのではなく、気候の問題と密接につながっているのです。
この関係についてはSDGs13の気候変動に具体的な対策をで扱われるテーマとも深く結びついています。
健康や社会に及ぶ深刻な影響

水と衛生の問題は、その地域の未来そのものを蝕みます。
不衛生な水による病気は、労働力を奪い、医療費の負担を増やします。特に水汲みは女性や子どもの役割とされることが多く、往復に何時間もかかることで教育や就労の機会が失われてしまいます。
つまり水の問題は、ジェンダー格差や貧困、教育の問題とも直結しているのです。この連鎖を断ち切ることが、SDGs6が持つ本当の意義といえるでしょう。
世界と日本の取り組み事例
もちろん、状況は少しずつですが改善に向かっています。
安全な飲料水の普及率は2015年の約70%から74%へと上昇し、2020年には138カ国で安全に管理された飲料水を提供できるようになりました。国際機関やNGO、企業による井戸の設置、浄水技術の提供、衛生教育などの取り組みが各地で進められています。
進んでいること
- 飲料水の普及率が緩やかに上昇
- 浄水・給水技術の途上国への提供
- 学校での衛生教育の広がり
残された課題
- 地域間格差が依然として大きい
- 現状ペースでは2030年達成は困難
- インフラ整備に資金と技術が不足
日本ならではの課題も見過ごせない
「日本は水に恵まれているから関係ない」と思われるかもしれません。
しかし、日本にも独自の課題があります。それが水道インフラの老朽化です。
高度経済成長期に整備された水道管の多くが更新時期を迎えており、老朽化による漏水や断水のリスクが高まっています。しかし人口減少による水道料金収入の減少で、更新のための財源確保が難しくなっているのが実情です。
加えて、地震や豪雨などの災害時には水道が寸断され、断水が生活を直撃します。「安全な水」を維持し続けることは、日本にとっても決して他人事ではないのです。
日本全体の取り組み状況についてはSDGsの日本の取り組みで、より広く確認できます。
私たちにできること
では、私たち一人ひとりには何ができるのでしょうか。
節水を心がける
歯磨き中に水を止める、シャワー時間を短くするなど、水を大切にする意識を持つ。
水を汚さない
油を排水口に流さない、洗剤を適量にするなど、排水への配慮を習慣にする。
寄付や関心を持つ
水・衛生分野で活動する団体への寄付や、問題を知り周囲に伝えることも立派な行動。
小さな行動でも、続けること、広げることに意味があります。日常でできる取り組みはSDGsで私たちにできることにもまとめられています。
よくある質問
SDGs6の「安全に管理された」とはどういう意味ですか
単に水やトイレがあるだけでなく、汚染されていない飲み水を必要なときに利用でき、排泄物が衛生的に処理される状態を指します。この基準を満たせない人が世界に何十億人もいるのが現状です。
日本は水が豊かなのに、なぜSDGs6が関係するのですか
日本国内では水道インフラの老朽化や災害時の断水リスクという課題があります。また、途上国への技術協力や支援という形でも、日本は国際的に重要な役割を担っています。
なぜ2030年までの達成が難しいと言われるのですか
改善は進んでいるものの、そのスピードが不十分だからです。特にインフラ整備には多額の資金と技術が必要で、地域間格差も大きいため、現状のペースでは目標達成が困難とされています。
個人の節水は本当に世界の水問題に役立つのですか
直接的に途上国の水が増えるわけではありませんが、水を大切にする意識が広がることや、水を汚さない行動は環境保全につながります。関心を持ち続けること自体が変化の第一歩です。
SDGs6は他の目標とどう関係していますか
水と衛生は、健康、教育、ジェンダー平等、貧困削減など多くの目標と密接につながっています。水汲みで学校に通えない子ども、不衛生で病気になる人など、一つの問題が連鎖的に他の問題を生み出しているのです。
まとめ
SDGs6「安全な水とトイレを世界中に」は、私たちが当たり前と思っている生活の土台が、世界では決して当たり前ではないことを教えてくれます。
約22億人が安全な水を、約34億人が衛生的なトイレを使えないという現実。その背景には、インフラ不足、水質汚染、気候変動といった複雑に絡み合った問題があります。
そして日本もまた、老朽化や災害という形で「安全な水を守り続ける」課題に直面しています。
まずは知ること、そして小さな行動を始めること。一人ひとりの意識が積み重なることで、世界の景色は少しずつ変わっていくはずです。この記事が、その第一歩のきっかけになれば幸いです。