SDGs目標7のために私たちにできること完全ガイド

「電気をつける」「スマホを充電する」——私たちが毎日なにげなく行っているこれらの行為が、実は地球規模のエネルギー問題と深くつながっていることをご存じでしょうか。SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、すべての人が手頃で信頼できる持続可能なエネルギーにアクセスできる世界を目指しています。しかし、世界ではいまだに約6.8億人が電力を利用できず、約23億人が調理に有害な燃料を使っている現状があります。「大きな目標だから自分には関係ない」と感じてしまいがちですが、個人的な経験から言えば、一人ひとりの小さな行動の積み重ねこそが、社会全体のエネルギー転換を加速させる原動力になると実感しています。
この記事で学べること
- 家庭の省エネ対策だけで年間約2万〜5万円の電気代削減が期待できる
- 再生可能エネルギーへの切り替えは個人でも手軽に始められる
- 日本のエネルギー自給率は約13%と先進国最低水準にとどまっている
- 「買い物」や「投資」を通じてクリーンエネルギーを間接的に支援できる
- 子どもと一緒に取り組めるエネルギー教育が未来の社会を変える鍵になる
SDGs目標7の基本をわかりやすく理解する
SDGs目標7は「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という名称で、2030年までに達成すべき具体的なターゲットが設定されています。
まず押さえておきたいのは、この目標が掲げる3つの柱です。第一に、すべての人が安価で信頼性の高い現代的なエネルギーサービスにアクセスできること。第二に、世界全体のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大すること。第三に、エネルギー効率の改善率を世界全体で倍増させることです。
これらは遠い国の話のように聞こえるかもしれません。
しかし日本に暮らす私たちにとっても、この目標は切実な課題です。日本のエネルギー自給率は約13%(2021年時点)で、OECD加盟国の中でも極めて低い水準にあります。つまり、私たちが使うエネルギーの約87%を海外からの輸入に頼っているということです。
なぜ「エネルギー」が持続可能な社会の鍵なのか
エネルギー問題は、他のSDGs目標とも密接に関わっています。
たとえば、クリーンなエネルギーが普及すれば、大気汚染が減少し健康被害が軽減されます(目標3:すべての人に健康と福祉を)。安定した電力供給は教育環境の改善にもつながります(目標4:質の高い教育をみんなに)。そして化石燃料の使用削減は、SDGs目標13の気候変動対策に直結します。
エネルギーは、いわば持続可能な社会を支える「土台」のような存在です。この土台を変えることで、複数の社会課題が同時に改善される可能性があるのです。
家庭でできる省エネの具体的な取り組み

SDGs目標7に対して私たちができることの中で、最も身近で即効性があるのが家庭での省エネです。特別な知識や大きな投資がなくても、今日から始められる取り組みがたくさんあります。
照明と家電の使い方を見直す
家庭のエネルギー消費で大きな割合を占めるのが、照明と家電製品です。
LED照明への切り替えは、最も手軽で効果の高い省エネ対策のひとつです。従来の白熱電球と比較すると、LED電球は消費電力が約85%少なく、寿命も約40倍長いとされています。初期費用はやや高いものの、電気代の節約分を考えると数カ月で元が取れるケースがほとんどです。
テレビやパソコンの「待機電力」も見逃せません。資源エネルギー庁の調査によると、家庭の消費電力の約5〜6%が待機電力によるものです。使わない家電のコンセントを抜く、あるいはスイッチ付き電源タップを活用するだけで、年間数千円の節約につながります。
エアコンの効率的な使い方
家庭のエネルギー消費の中で最も大きな割合を占めるのが、冷暖房です。
エアコンの設定温度を夏は28℃、冬は20℃にすることが推奨されています。経験上、この設定だけで物足りなく感じる場合は、扇風機やサーキュレーターを併用すると体感温度が2〜3℃変わるため、無理なく快適に過ごせます。
フィルターの掃除も重要です。2週間に1回程度フィルターを清掃するだけで、エアコンの消費電力が約5〜10%改善するといわれています。これは小さな習慣ですが、年間を通じた効果は決して小さくありません。
省エネ家電への買い替えを検討する
古い家電を使い続けることが、実は大きなエネルギーの無駄になっている場合があります。
たとえば、10年前の冷蔵庫と最新モデルを比較すると、消費電力が40〜50%も削減されているケースがあります。エアコンや洗濯機も同様で、最新の省エネ基準を満たした製品は、長期的に見ると電気代の削減効果が購入費用を上回ることが多いです。
購入時には「統一省エネラベル」の星の数を確認するのがおすすめです。星が多いほど省エネ性能が高く、エコキュートのようなヒートポンプ技術を活用した給湯器への切り替えも、大幅な省エネにつながります。
再生可能エネルギーを選ぶ・支える方法

省エネに加えて、使うエネルギーそのものを「クリーン」にしていくことも、SDGs目標7の達成には不可欠です。個人レベルでも、再生可能エネルギーを選び、支える方法はいくつかあります。
電力会社の切り替えで再エネを選ぶ
2016年の電力自由化以降、私たちは電力会社を自由に選べるようになりました。
現在、多くの新電力会社が再生可能エネルギー比率の高い電力プランを提供しています。太陽光、風力、水力、バイオマスなどを主な電源とするプランを選ぶことで、家庭から排出されるCO2を大幅に削減できます。
切り替え手続きは基本的にオンラインで完結し、工事も不要です。電気の品質が変わることもありません。料金も従来の大手電力会社と同等か、場合によっては安くなるケースもあります。
太陽光発電の導入を検討する
自宅に太陽光パネルを設置することは、再生可能エネルギーへの最も直接的な貢献のひとつです。
初期費用は一般的な住宅用で100〜200万円程度ですが、自治体の補助金制度を活用すれば負担を軽減できます。発電した電力を自家消費することで電気代が削減され、余剰電力は売電収入として得られます。設置条件にもよりますが、多くの場合10〜15年程度で初期投資を回収できるとされています。
賃貸住宅にお住まいの方でも、ベランダに設置できるポータブルソーラーパネルが近年注目を集めています。大きな発電量は期待できませんが、スマートフォンの充電程度であれば十分に賄えます。
再エネ導入のメリット
- CO2排出量を大幅に削減できる
- 電気代の長期的な節約につながる
- 災害時の非常用電源として活用可能
- エネルギー自給率の向上に貢献する
考慮すべき課題
- 初期費用が高額になる場合がある
- 天候や立地条件に発電量が左右される
- 賃貸住宅では設置が難しいケースがある
- パネルの廃棄・リサイクル体制が発展途上
日常生活の中でエネルギーを意識した行動をとる

家庭の省エネや再エネの導入以外にも、日常のさまざまな場面でエネルギー問題に貢献できる行動があります。
移動手段を見直す
交通分野は、日本のCO2排出量の約17%を占めています。
自家用車の利用を減らし、公共交通機関や自転車、徒歩に切り替えることは、エネルギー消費の削減に直結します。通勤で週に1日だけでも自転車や電車に変えるだけで、年間のCO2排出量を数百キログラム削減できるとされています。
車が必要な場合でも、エコドライブを心がけることで燃費が10〜20%向上します。急発進・急加速を避ける、アイドリングストップを実践する、タイヤの空気圧を適正に保つといった基本的な運転習慣の改善で、ガソリン代の節約とCO2削減の両方が実現できます。
買い物を通じてクリーンエネルギーを支援する
消費者としての選択も、大きな影響力を持っています。
再生可能エネルギーで製造された製品を選ぶ、環境に配慮した取り組みを行っている企業の商品を購入する——こうした「エシカル消費」は、企業のクリーンエネルギー転換を後押しする力になります。
RE100(使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)に参加する日本企業も増えています。こうした企業の製品やサービスを意識的に選ぶことで、間接的にクリーンエネルギーの普及を支援できるのです。
グリーン投資で資金面から支える
投資や貯蓄を通じて再生可能エネルギーを支援する方法もあります。
グリーンボンド(環境債)やESG投資信託は、クリーンエネルギー関連のプロジェクトに資金を振り向ける仕組みです。近年は少額から始められるESG投資商品も増えており、銀行の定期預金感覚で始められるものもあります。
また、一部の銀行では「グリーン預金」として、預けたお金が再生可能エネルギー事業に活用される商品を提供しています。お金の「置き場所」を変えるだけで、エネルギー転換に貢献できるのです。
地域やコミュニティで取り組めること
個人の行動に加えて、地域やコミュニティ単位での取り組みは、より大きなインパクトを生み出す可能性を秘めています。
地域の再エネプロジェクトに参加する
全国各地で、市民参加型の再生可能エネルギープロジェクトが増えています。
「市民風車」や「市民ソーラー」と呼ばれる仕組みでは、地域住民が出資して太陽光発電所や風力発電所を共同で設置・運営します。自宅に太陽光パネルを設置できない方でも、こうしたプロジェクトを通じて再エネの普及に参加できます。
自治体が主導する省エネキャンペーンやエコポイント制度に参加するのも効果的です。多くの自治体では、省エネ家電の購入補助や太陽光発電の設置補助金を提供しています。お住まいの自治体のホームページで、利用可能な制度を確認してみてください。
エネルギー教育を次世代につなげる
子どもたちへのエネルギー教育は、長期的に見て最も影響力のある取り組みかもしれません。
家庭で電気の使い方について話し合う、一緒に電気メーターを確認して消費量を「見える化」する、太陽光パネルや風力発電所を見学する——こうした体験を通じて、子どもたちのエネルギーに対する意識が自然と育まれます。
SDGsに対して私たちができることを家族で考える時間を持つことは、エネルギー問題に限らず、持続可能な社会づくりへの第一歩になるでしょう。
知る
エネルギー問題の現状と自分の消費量を把握する
減らす
省エネ行動と家電の見直しでエネルギー消費を削減する
替える
再生可能エネルギーへの切り替えや投資で支援する
広める
家族や地域に取り組みを共有し、行動の輪を広げる
世界のエネルギー問題に目を向けてできること
SDGs目標7は「すべての人に」エネルギーを届けることを目指しています。日本国内の取り組みだけでなく、世界のエネルギー問題に対しても、私たちにできることがあります。
途上国のエネルギーアクセス改善を支援する
アフリカのサハラ以南地域では、人口の約半数が電力にアクセスできていません。
国際NGOやJICA(国際協力機構)を通じた寄付は、途上国での太陽光発電システムの設置や、クリーンな調理用ストーブの普及に活用されています。月額数百円からの継続的な支援でも、現地の人々の生活を大きく変える力になります。
また、フェアトレード商品を選ぶことも間接的な支援になります。フェアトレード認証を受けた生産者の多くは、持続可能なエネルギーの利用を促進する取り組みを行っています。
情報を発信し意識を広げる
SNSやブログを通じてエネルギー問題について発信することも、立派な貢献です。
気候変動に対して私たちができることと合わせて、エネルギーの問題を身近な人と共有するだけでも、社会全体の意識は少しずつ変わっていきます。「自分一人が行動しても意味がない」と思わず、一人の行動が周囲の5〜10人に影響を与え、それが連鎖的に広がっていくことが研究でも示されています。
SDGs目標7達成に向けた日本の現状と課題
私たちの行動をより効果的なものにするために、日本のエネルギー事情の現状を正しく理解しておくことが大切です。
日本のエネルギーミックスの現状
日本の電源構成(2022年度)を見ると、化石燃料(石炭・天然ガス・石油)が全体の約72%を占めています。再生可能エネルギーの割合は約22%で、年々増加傾向にあるものの、政府が掲げる2030年度の目標値(36〜38%)にはまだ距離があります。
日本の電源構成(2022年度概算)
この数字を見ると、日本の再生可能エネルギーの割合はまだ全体の約5分の1程度であり、目標達成には一人ひとりの行動変容が欠かせないことがわかります。
企業の取り組みから学べること
日本企業の中にも、エネルギー転換に積極的に取り組む事例が増えています。
RE100に参加する日本企業は80社以上(2023年時点)に達しており、使用電力の100%再エネ化を目指しています。こうした企業の製品やサービスを選ぶことは、私たち消費者ができる強力な「投票」です。
SDGs達成度の日本と世界のランキングを見ると、日本はエネルギー分野でまだ改善の余地が大きいことがわかります。しかし裏を返せば、私たちの行動次第で大きく前進できる分野でもあるのです。
今日から始められるアクションチェックリスト
ここまで紹介してきた取り組みの中から、すぐに実践できるものをまとめました。すべてを一度に始める必要はありません。できることからひとつずつ、無理のないペースで取り組んでいくことが大切です。
SDGs目標7のためにできることリスト
大切なのは「完璧を目指す」ことではなく、「できることから始める」という姿勢です。一つひとつの行動は小さくても、日本の約5,000万世帯がそれぞれ少しずつ行動を変えれば、その影響は計り知れません。
持続可能な社会のためにできることは、エネルギー分野だけにとどまりません。しかし、エネルギーという「生活の基盤」を見直すことは、あらゆるサステナビリティの取り組みの出発点になるはずです。
よくある質問
SDGs目標7は日本にはあまり関係ないのでは?
日本では電力が安定的に供給されているため、そう感じる方も多いかもしれません。しかし、日本のエネルギー自給率は約13%と先進国の中でも極めて低く、化石燃料への依存度が高い状態が続いています。エネルギー安全保障の観点からも、再生可能エネルギーの普及や省エネの推進は日本にとって非常に重要な課題です。また、日本のCO2排出量は世界第5位であり、クリーンエネルギーへの転換は国際的な責任でもあります。
省エネを頑張っても地球規模では影響が小さいのでは?
確かに一人の行動だけでは影響は限定的です。しかし、日本全体で見ると家庭部門のCO2排出量は全体の約15%を占めています。約5,000万世帯がそれぞれ10%の省エネを達成するだけでも、年間数千万トンのCO2削減につながります。さらに、個人の行動変容は企業や政策にも影響を与え、社会全体のエネルギー転換を加速させる力になります。
再生可能エネルギーの電力プランに切り替えると電気代は高くなりますか?
必ずしも高くなるとは限りません。電力自由化以降、多くの新電力会社が競争力のある価格で再エネプランを提供しています。地域や使用量によっては、従来の大手電力会社よりも安くなるケースもあります。まずは比較サイトで複数のプランを確認し、自分の使用パターンに合ったものを選ぶことをおすすめします。切り替え手続きもオンラインで簡単にできます。
賃貸住宅に住んでいても再生可能エネルギーに貢献できますか?
もちろんできます。太陽光パネルの設置は難しくても、電力会社の切り替えは賃貸住宅でも可能です。また、省エネ家電の使用、ベランダ用のポータブルソーラーパネルの活用、グリーン投資やESG投資を通じた間接的な支援、環境に配慮した企業の製品を選ぶエシカル消費など、住居形態に関係なくできることはたくさんあります。
子どもと一緒にSDGs目標7について学ぶにはどうすればいいですか?
まずは家庭の電気メーターを一緒に確認し、「見える化」から始めるのがおすすめです。毎月の電気使用量を記録し、省エネの効果をグラフにすると、子どもも楽しみながら取り組めます。太陽光発電所や風力発電所の見学ツアーに参加するのも良い体験になります。また、SDGs目標7の基本的な内容を一緒に読んで、「なぜエネルギーが大切なのか」を話し合うことで、子どもの環境意識が自然と育まれていきます。