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SDGs

ジェンダー平等を実現しようSDGs目標5の取り組みを徹底解説

「女性だから」「男性だから」という理由で、可能性が制限される社会は、本当に持続可能と言えるのでしょうか。

世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数において、日本は2024年に146カ国中118位という結果でした。先進国の中では最低レベルの順位が続いています。SDGs(持続可能な開発目標)の目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、こうした現状を変えるための世界共通の約束です。

個人的にSDGsに関わる活動を続ける中で感じているのは、ジェンダー平等は「女性のための目標」ではなく、すべての人がより自由に生きるための土台だということです。この記事では、目標5の具体的な内容から、世界と日本の現状、そして私たちにできることまで、できるだけわかりやすくお伝えします。

この記事で学べること

  • SDGs目標5には9つのターゲットがあり、教育・政治・経済すべてに関わる包括的な目標である
  • 日本のジェンダーギャップ指数は118位で、特に政治・経済分野の格差が深刻な状況にある
  • 世界では年間約1,200万人の少女が18歳未満で結婚させられている現実がある
  • 企業のジェンダー平等への取り組みが業績向上につながるという調査結果が複数存在する
  • 日常生活の中で今日からできるジェンダー平等への具体的なアクションがある

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは何か

SDGs目標5は、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」の17の目標のうちの一つです。

正式名称は「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う」。単に男女の数字を揃えるという話ではなく、社会のあらゆる場面で性別による不平等をなくし、すべての人が能力を発揮できる環境を整えることを目指しています。

ここで大切なのは、「ジェンダー」と「性別(セックス)」の違いです。ジェンダーとは、社会的・文化的につくられた性別の役割や期待のことを指します。「男の子は泣いてはいけない」「女の子はおしとやかに」といった、生物学的な違いとは関係のない社会的な「決めつけ」がジェンダーです。

目標5が掲げる9つのターゲット

SDGs目標5には、具体的に達成すべき9つのターゲットが設定されています。これらは大きく分けると、差別の撤廃暴力の根絶権利の保障参画の促進の4つの柱に分類できます。

5.1

あらゆる差別の撤廃

すべての女性・女児に対するあらゆる形態の差別をなくす

5.2

暴力の根絶

人身売買や性的搾取を含むあらゆる暴力を排除する

5.3

有害な慣行の撤廃

児童婚や女性器切除などの有害な慣行をなくす

5.4

無償労働の認識と評価

家事・育児・介護などの無償ケア労働を正当に評価する

5.5

参画と機会の平等

政治・経済・公共分野での意思決定への完全な参画を確保する

5.6

性と生殖に関する権利

性と生殖に関する健康と権利への普遍的アクセスを確保する

さらに、ターゲット5.a(女性への経済的資源の平等な権利)、5.b(女性のエンパワーメントのためのICT活用)、5.c(ジェンダー平等のための政策・法規の導入と強化)の3つの実施手段が定められています。

世界のジェンダー不平等の現状

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは何か - ジェンダー平等を実現しよう(SDGs目標5)
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは何か – ジェンダー平等を実現しよう(SDGs目標5)

「平等」と聞くと、すでにかなり進んでいるように感じる方もいるかもしれません。

しかし、現実の数字を見ると、まだまだ道のりは長いことがわかります。国連の報告によれば、現在のペースでジェンダー平等を完全に達成するには、あと約300年かかるとされています。

教育分野の格差

世界全体で見ると、約1億3,200万人の女の子が学校に通えていません。特にサハラ以南のアフリカや南アジアでは、女子の就学率が男子に比べて著しく低い状況が続いています。

教育を受けられないことは、その後の人生すべてに影響します。収入の機会が制限され、早婚のリスクが高まり、健康に関する知識を得られないまま大人になるケースも少なくありません。

経済分野の格差

世界の労働参加率を見ると、男性が約75%であるのに対し、女性は約50%にとどまっています。さらに、同じ仕事をしていても、女性の賃金は男性の約80%程度というデータもあります。

📊

世界のジェンダー格差の主な指標

女性の労働参加率
約50%

男性の労働参加率
約75%

女性国会議員比率
約26%

女性の賃金水準
男性の約80%

暴力と有害な慣行

世界では、3人に1人の女性が生涯のうちに身体的または性的暴力を経験しているとされています。

また、毎年約1,200万人の少女が18歳未満で結婚させられています。児童婚は教育の機会を奪い、健康リスクを高め、貧困の連鎖を生み出す深刻な問題です。女性器切除(FGM)も依然として30カ国以上で行われており、推定2億人以上の女性・女児が影響を受けています。

政治参画の格差

世界の国会議員に占める女性の割合は約26%です。この数字は少しずつ改善しているものの、意思決定の場に女性の声が十分に反映されているとは言い難い状況です。

💡 実体験から学んだこと
SDGsに関するワークショップを開催する中で気づいたのですが、ジェンダー格差の数字を初めて知った参加者の多くが「まさかここまでとは」と驚かれます。知ることが、行動の第一歩になるのだと実感しています。

日本のジェンダー平等の現状と課題

世界のジェンダー不平等の現状 - ジェンダー平等を実現しよう(SDGs目標5)
世界のジェンダー不平等の現状 – ジェンダー平等を実現しよう(SDGs目標5)

日本は世界第3位の経済大国でありながら、ジェンダー平等の面では大きな課題を抱えています。

2024年の世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ指数」で、日本は146カ国中118位でした。特に「政治参画」と「経済参画」の分野で著しい格差が見られます。

政治分野の現状

日本の衆議院における女性議員の割合は約10%前後で推移しており、世界平均の26%を大きく下回っています。地方議会でも女性議員の割合は低く、「女性ゼロ議会」と呼ばれる、女性議員が一人もいない地方議会も依然として存在しています。

2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が施行されましたが、罰則規定がないこともあり、劇的な変化にはつながっていないのが現状です。

経済分野の現状

日本における男女の賃金格差は、女性の賃金が男性の約75%程度とされています。管理職に占める女性の割合も約15%前後で、政府が掲げていた「2020年までに30%」という目標は達成されませんでした。

また、日本では非正規雇用者に占める女性の割合が高く、雇用の不安定さがジェンダー格差を拡大させる要因の一つになっています。

118位
ジェンダーギャップ指数(146カ国中)

約10%
衆議院の女性議員比率

約75%
女性の賃金水準(男性比)

約15%
管理職に占める女性の割合

無償ケア労働の偏り

日本では、家事・育児・介護といった無償のケア労働が女性に偏っている傾向が顕著です。総務省の「社会生活基本調査」によると、共働き世帯であっても、家事関連時間は女性が男性の約4倍という結果が出ています。

この偏りは、女性のキャリア形成を阻害し、経済的な格差を生む大きな要因です。ターゲット5.4が「無償ケア労働の認識と評価」を掲げているのは、まさにこの問題に対応するためです。

ジェンダー平等が他のSDGs目標に与える影響

日本のジェンダー平等の現状と課題 - ジェンダー平等を実現しよう(SDGs目標5)
日本のジェンダー平等の現状と課題 – ジェンダー平等を実現しよう(SDGs目標5)

ジェンダー平等は、目標5だけの話ではありません。

実は、17あるSDGs目標のほぼすべてに、ジェンダーの視点が関わっています。これを「ジェンダー主流化」と呼び、SDGs全体を達成するための横断的なテーマとして位置づけられています。

貧困をなくそう(SDGs目標1)との関連で言えば、世界の貧困層の約70%を女性が占めているとされ、ジェンダー格差の解消なくして貧困の撲滅は実現しません。

質の高い教育をみんなに(SDGs目標4)についても、女子教育の普及は出生率の安定、子どもの健康改善、経済成長に直結することが多くの研究で示されています。女の子が1年長く中等教育を受けるごとに、将来の収入が最大25%増加するというデータもあります。

さらに、気候変動に具体的な対策を(SDGs目標13)の分野でも、気候変動の影響を最も受けやすいのは途上国の女性であり、ジェンダーの視点なしには効果的な気候変動対策は立てられないとされています。

平和と公正をすべての人に(SDGs目標16)との関連も深く、紛争下での性暴力や、女性の平和構築プロセスへの参画は、持続的な平和を実現する上で欠かせない要素です。

企業によるジェンダー平等への取り組み事例

近年、日本企業でもジェンダー平等に向けた取り組みが加速しています。

背景には、ESG投資の拡大や、人材確保の観点からダイバーシティ経営が求められていることがあります。マッキンゼーの調査によると、ジェンダー多様性が高い企業は、そうでない企業に比べて収益性が25%高い傾向があるとされています。

女性活躍推進法と「えるぼし認定」

2016年に施行された「女性活躍推進法」により、従業員301人以上の企業は女性活躍に関する行動計画の策定と情報公開が義務づけられました。2022年の改正では、対象が101人以上の企業に拡大されています。

優良な取り組みを行う企業は「えるぼし認定」を受けることができ、公共調達での加点評価や企業イメージの向上につながります。

具体的な企業の取り組み例

日本を代表する企業の中には、先進的な取り組みを進めているところがあります。

男性育休の推進では、積水ハウスが「男性育休100%」を宣言し、1カ月以上の育休取得を推進しています。男性が育児に参画することで、無償ケア労働の偏りを是正する効果が期待されています。

女性管理職比率の向上では、資生堂が早くから女性リーダー育成プログラムを導入し、国内の女性管理職比率を約40%にまで引き上げました。

ジェンダーバイアス研修として、多くの企業が無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に気づくための研修を導入しています。「女性は補助的な仕事」「男性はリーダーシップを取るべき」といった無意識の思い込みに気づくことが、組織文化を変える第一歩です。

💡 実体験から学んだこと
ある企業のダイバーシティ研修に参加した際、「無意識バイアスチェック」を受けたことがあります。自分では偏見がないと思っていたのに、結果を見て愕然としました。意識していないからこそ「無意識」のバイアスなのだと痛感した経験です。

世界の先進的な取り組みから学ぶ

ジェンダーギャップ指数で常に上位にランクインしている国々には、共通する取り組みがあります。

北欧諸国のアプローチ

アイスランドは14年連続でジェンダーギャップ指数1位を維持しています。その背景には、2018年に施行された「同一賃金認証法」があります。企業に対して、男女の賃金が同等であることを証明する義務を課すもので、違反した場合は罰金が科されます。

スウェーデンでは、育児休業制度において「パパ・クオータ制」を導入しています。これは育休の一定期間を父親に割り当てるもので、「使わなければ消滅する」仕組みにすることで、男性の育休取得を促進しています。

クオータ制の効果

ノルウェーは2003年に、上場企業の取締役会における女性比率を40%以上にすることを法律で義務づけました。この「クオータ制」の導入後、女性取締役の割合は急速に上昇し、企業の意思決定の質が向上したとする研究もあります。

日本でもクオータ制の導入が議論されていますが、「能力ではなく性別で選ぶのか」という反対意見も根強くあります。しかし、多くの実例を通じて効果的だと考えられているのは、クオータ制は「能力のある女性が構造的な障壁によって排除されている」現状を是正するための一時的な措置であるという考え方です。

私たちにできる具体的なアクション

ジェンダー平等は、政府や企業だけの課題ではありません。

日常生活の中で、一人ひとりができることがたくさんあります。

今日からできるアクションリスト

言葉と意識を変える

最も身近で、最も影響力のあるアクションは、日常の言葉遣いを見直すことです。

「女のくせに」「男なんだから」という表現はもちろん、「お母さんが作ったお弁当」「お父さんの稼ぎ」といった何気ない言葉にも、ジェンダーの固定観念が含まれていることがあります。

学び続ける

ジェンダーに関する書籍を読んだり、ドキュメンタリーを観たりすることも大切です。国連ウィメン日本協会や内閣府男女共同参画局のウェブサイトでは、最新のデータや取り組み事例が公開されています。

SDGs17の目標の全体像を理解した上で、ジェンダーの視点から各目標を見直してみると、新たな気づきが得られるかもしれません。

職場でできること

職場では、会議での発言機会が性別によって偏っていないか、評価基準に無意識のバイアスが入っていないかを意識することが重要です。

経験上、小さな変化が大きな効果を生むことがあります。たとえば、会議のファシリテーターが意識的に全員に発言を促すだけで、女性の発言量が大幅に増えたという事例もあります。

⚠️
注意事項
ジェンダー平等の推進は、「男性 vs 女性」の対立構造ではありません。すべての性別の人が固定的な役割から解放され、自分らしく生きられる社会を目指すものです。男性もまた、「稼がなければならない」「弱さを見せてはいけない」といったジェンダー規範に苦しんでいるケースが少なくありません。

ジェンダー平等の実現に向けた今後の展望

2030年のSDGs達成期限まで、残された時間は多くありません。

日本政府は「第5次男女共同参画基本計画」を策定し、2025年度末までに女性管理職比率30%を目指す目標を掲げています。また、「女性版骨太の方針」として、女性の経済的自立に向けた施策も進められています。

しかし、制度を整えるだけでは十分ではありません。真のジェンダー平等は、社会全体の意識が変わることで初めて実現します。

SDGs達成度ランキングを見ても、日本がジェンダー分野で大きく順位を下げていることは明らかです。この状況を変えるには、政策・企業・個人のすべてのレベルで、継続的な取り組みが必要です。

これまでの取り組みで感じているのは、変化は一夜にして起こるものではないということです。しかし、一人ひとりの小さな行動が積み重なることで、確実に社会は変わっていきます。

よくある質問

ジェンダー平等と男女平等は違うものですか

「男女平等」は主に男性と女性の間の平等を指しますが、「ジェンダー平等」はより広い概念です。生物学的な性別だけでなく、社会的・文化的に構築された性別の役割や期待に基づく不平等の解消を含みます。また、性的マイノリティ(LGBTQ+)の権利も包含する考え方です。SDGs目標5では「ジェンダー平等」という表現を使うことで、より包括的なアプローチを目指しています。

日本のジェンダーギャップ指数が低い主な原因は何ですか

日本のジェンダーギャップ指数が低い最大の要因は、「政治参画」と「経済参画」の分野です。衆議院の女性議員比率が約10%と極めて低いこと、管理職に占める女性の割合が約15%にとどまっていること、男女の賃金格差が依然として大きいことが主な原因です。一方、「教育」と「健康」の分野ではほぼ平等に近い水準を達成しています。

ジェンダー平等は男性にとってもメリットがありますか

大いにあります。ジェンダー平等が進むことで、男性も「一家の大黒柱でなければならない」「弱さを見せてはいけない」といった固定的な役割から解放されます。育児や家事への参画がしやすくなり、ワークライフバランスが改善されます。また、メンタルヘルスの面でも、感情を自由に表現できる社会は男性にとっても生きやすい社会です。実際に、ジェンダー平等が進んでいる国ほど、男性の幸福度も高いという研究結果があります。

企業がジェンダー平等に取り組むことで業績は向上しますか

複数の国際的な調査が、ジェンダー多様性と企業業績の正の相関を示しています。マッキンゼーの調査では、ジェンダー多様性が高い企業は収益性が25%高い傾向があるとされています。多様な視点が意思決定の質を高め、イノベーションを促進し、より幅広い顧客ニーズへの対応を可能にするためと考えられています。ただし、単に女性の数を増やすだけでなく、インクルーシブな組織文化を築くことが重要です。

子どもに対してジェンダー平等の教育はどのように行えばよいですか

まず、性別に関係なく多様な選択肢を示すことが大切です。「男の子だからサッカー」「女の子だからピアノ」ではなく、本人の興味に基づいて活動を選ばせましょう。絵本や映画も、多様な役割を描いた作品を選ぶことが効果的です。また、家庭内で大人が率先して家事を分担する姿を見せることが、最も強力な教育になります。「お手伝い」ではなく「家族みんなの仕事」として位置づけることがポイントです。