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SDGs

陸の豊かさを守ろうの意味と私たちにできること徹底解説

私たちが毎日歩いている大地、そこに広がる森林や草原、そしてそこに暮らす無数の生き物たち。普段は意識しないかもしれませんが、この「陸の豊かさ」が今、かつてないスピードで失われています。SDGs(持続可能な開発目標)の目標15として掲げられた「陸の豊かさを守ろう」は、私たちの生活基盤そのものを守るための呼びかけです。

個人的にSDGsの各目標について調べてきた中で感じているのは、この目標15は他の目標と深く結びついており、理解が進むほど「自分ごと」として捉えやすくなるということです。この記事では、目標15の全体像から具体的なターゲット、世界と日本の現状、そして私たち一人ひとりができることまでを丁寧に解説していきます。

この記事で学べること

  • 毎年約1,000万ヘクタールの森林が失われており、日本の国土面積の約4分の1に相当する
  • SDGs目標15には12のターゲットがあり、森林・砂漠化・生物多様性の3本柱で構成されている
  • 陸の生態系の劣化は貧困や気候変動と直結し、約16億人の生活に影響を与えている
  • 日本は国土の約67%が森林でありながら、生物多様性の危機に直面している
  • FSC認証製品の選択や地産地消など、今日から始められる具体的な行動がある

陸の豊かさを守ろうとは何か

「陸の豊かさを守ろう」は、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のうち、15番目に位置する目標です。

英語では「Life on Land」と表現されます。正式な目標文は「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」という内容です。

少し長くて難しく感じるかもしれません。

簡単に言えば、「森を守り、砂漠化を止め、動植物の多様性を未来に残していこう」というメッセージです。地球上の陸地に存在するすべての生態系を健全な状態で維持し、次の世代へ引き継ぐことを目指しています。

なぜ陸の豊かさが重要なのか

私たちの食料、きれいな水、呼吸する空気。これらはすべて、健全な陸の生態系があってこそ成り立っています。

世界の食料の約80%は農業に依存しており、その農業は健康な土壌なしには成り立ちません。森林は地球上の二酸化炭素を吸収する巨大な「炭素の貯蔵庫」であり、気候変動対策においても欠かせない存在です。さらに、陸上の生態系は世界の約16億人の生計を直接支えています。特に発展途上国では、森林資源に依存して暮らす人々が数多くいます。

つまり、陸の豊かさを守ることは、環境問題であると同時に、貧困問題や食料安全保障にも直結する課題なのです。

SDGs目標15の具体的なターゲット

目標15には、達成すべき具体的なターゲットが12項目設定されています。これらは大きく3つの柱に分類できます。

森林の保全と持続可能な管理

ターゲット15.1では、2020年までに森林、湿地、山地、乾燥地などの陸域生態系とその内陸淡水生態系の保全・回復・持続可能な利用を確保することが求められています。

ターゲット15.2は、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復させることを目標としています。世界では毎年約1,000万ヘクタールの森林が失われているとされ、この数字は北海道と四国を合わせた面積にほぼ匹敵します。

砂漠化と土地の劣化への対処

ターゲット15.3では、砂漠化に対処し、砂漠化や干ばつ、洪水の影響を受けた土地を含む劣化した土地と土壌を回復させることが掲げられています。

現在、世界の陸地面積の約40%が劣化の影響を受けているとされています。これは農業の生産性低下だけでなく、食料不足や人々の移住にもつながる深刻な問題です。国連砂漠化対処条約(UNCCD)を中心に、国際的な取り組みが進められています。

生物多様性の保全

ターゲット15.5では、絶滅危惧種の保護と絶滅防止のための緊急かつ重要な対策を講じることが求められています。現在、約100万種の動植物が絶滅の危機に瀕しているとIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで報告されています。

ターゲット15.7は、保護の対象となっている動植物種の密猟や違法取引を撲滅するための緊急対策を講じることを求めています。ワシントン条約(CITES)やラムサール条約、生物多様性条約などの国際的な枠組みが、この取り組みを支えています。

📊

目標15の3つの柱と主な課題

森林消失
年間1,000万ha

土地劣化
陸地の約40%

絶滅危惧
約100万種

世界が直面している陸の生態系の危機

数字だけを並べても実感が湧きにくいかもしれません。ここでは、世界で実際に起きている具体的な問題を見ていきましょう。

森林破壊の現状

世界の森林面積は、1990年から2020年の30年間で約1億7,800万ヘクタール減少したとFAO(国連食糧農業機関)は報告しています。これは日本の国土面積の約4.7倍に相当する広さです。

特に熱帯雨林の消失は深刻です。アマゾン、東南アジア、中央アフリカの熱帯林は、農地の拡大、違法伐採、インフラ開発などによって急速に縮小しています。熱帯雨林は「地球の肺」とも呼ばれ、膨大な量の二酸化炭素を吸収しています。この機能が失われれば、気候変動の加速は避けられません。

一方で、希望の光もあります。国連森林フォーラム(UNFF)を中心とした国際的な取り組みにより、一部の地域では森林面積が回復傾向にあります。中国やインドでは大規模な植林プロジェクトが進められ、ヨーロッパでも森林面積は増加しています。

砂漠化の拡大

砂漠化は、乾燥地域だけの問題ではありません。

過度な放牧、不適切な農業、気候変動の影響により、世界中で土地の劣化が進んでいます。アフリカのサヘル地域やアジアの中央部では、かつて緑豊かだった土地が砂漠へと変わりつつあります。土地が劣化すると農業生産が落ち込み、食料不足が深刻化し、人々は住み慣れた土地を離れざるを得なくなります。いわゆる「環境難民」の問題です。

生物多様性の喪失

地球上の生物種が絶滅するスピードは、自然な状態の1,000倍以上に達しているとされています。

この数字は衝撃的です。

哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類のうち、多くの種が生息地の喪失、気候変動、外来種の侵入、汚染、乱獲などの脅威にさらされています。生物多様性の喪失は、食物連鎖の崩壊や生態系サービスの低下を通じて、最終的には人間の生活にも大きな影響を及ぼします。

💡 実体験から学んだこと
SDGsの各目標を調べていく中で気づいたのは、目標15「陸の豊かさを守ろう」は単独で存在しているのではなく、気候変動(目標13)、貧困(目標1)、飢餓(目標2)など、他の目標と網の目のように結びついているということです。一つの生態系の破壊が、思いもよらない場所で連鎖的な影響を引き起こします。

日本における陸の豊かさの現状

日本は国土の約67%を森林が占める、世界でも有数の森林大国です。しかし、森林面積が多いからといって、すべてが順調というわけではありません。

日本の森林が抱える課題

日本の森林の約4割は人工林です。戦後の拡大造林政策により植えられたスギやヒノキの人工林は、現在、管理の担い手不足という深刻な問題に直面しています。適切に間伐されない人工林は、光が地面に届かず下草が育たないため、土壌が流出しやすくなります。

また、林業の衰退により、国産木材の利用が減少し、安価な輸入木材に頼る構造が長く続いてきました。これは間接的に、海外の森林破壊に加担してしまう側面もあります。

日本の生物多様性の危機

環境省のレッドリストによると、日本国内でも多くの動植物が絶滅の危機に瀕しています。ニホンカワウソやニホンオオカミのように、すでに絶滅してしまった種もあります。

近年特に問題となっているのが、外来種の侵入です。アライグマ、ヒアリ、オオキンケイギクなど、本来日本に生息していなかった生物が在来種の生存を脅かしています。さらに、里山の放棄による生態系の変化も深刻です。かつて人間が適度に管理することで保たれていた里山の生態系が、過疎化や高齢化によって維持できなくなっています。

日本の取り組みと成果

一方で、日本には誇るべき取り組みもあります。

国立公園や自然保護区の設定、絶滅危惧種の保護プログラム、そして「SATOYAMA イニシアティブ」と呼ばれる里山の知恵を世界に発信する取り組みなどが進められています。2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)では、「愛知目標」が採択され、生物多様性保全の国際的な枠組みづくりに日本が大きく貢献しました。

67%
日本の森林率

約40%
人工林の割合

3,700+
絶滅危惧種の数

陸の豊かさを守るための国際的な枠組み

目標15の達成に向けて、さまざまな国際条約や枠組みが機能しています。これらを理解しておくと、ニュースで見かけたときに背景が分かるようになります。

主要な国際条約

生物多様性条約(CBD)は、生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用、遺伝資源から生じる利益の公正な配分を目的とした条約です。2022年にカナダ・モントリオールで開催されたCOP15では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030年までに陸と海の30%を保全する「30by30目標」が合意されました。

ワシントン条約(CITES)は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約です。象牙の取引禁止などが有名ですが、植物や昆虫なども対象に含まれています。

ラムサール条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地の保全を目的としています。日本では釧路湿原や琵琶湖など、53か所がラムサール条約湿地に登録されています。

国連森林フォーラムと持続可能な森林経営

国連森林フォーラム(UNFF)は、世界の森林に関する政策対話を行う場として機能しています。「国連森林戦略計画2017-2030」では、持続可能な森林経営の推進と、世界の森林面積を3%増加させるという目標が掲げられています。

これらの国際的な枠組みは、各国が単独では解決できない地球規模の課題に対して、協力して取り組むための基盤となっています。

私たちにできる具体的な行動

「陸の豊かさを守ろう」と言われても、個人として何ができるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

実は、日常生活の中でできることはたくさんあります。

消費行動を変える

FSC認証やPEFC認証のマークが付いた木材製品・紙製品を選ぶことは、持続可能な森林経営を支える最も身近な行動です。ノートや印刷用紙、家具など、認証マークを確認する習慣をつけるだけで、違法伐採された木材の需要を減らすことにつながります。

また、地産地消を心がけることも重要です。遠くから輸送される食品は、その生産過程で森林の伐採や土地の開発が行われている可能性があります。地元で生産された食材を選ぶことで、輸送による環境負荷を減らすだけでなく、地域の農業を支えることにもなります。

リデュースの考え方を日常に取り入れ、不必要な消費を減らすことも、間接的に陸の生態系を守ることにつながります。

身近な自然環境に関わる

地域の植樹活動やビーチクリーン、里山の保全活動に参加することは、直接的に陸の豊かさを守る行動です。最近では、企業や自治体が主催する植樹イベントも増えており、気軽に参加できる機会が広がっています。

自宅の庭やベランダで在来種の植物を育てることも、小さいながらも生物多様性の保全に貢献します。蝶や蜂などの花粉媒介者(ポリネーター)にとって、都市部の緑は貴重な資源となります。

知識を深め、発信する

問題を「知る」こと自体が、最初の一歩です。

SDGsや環境問題について学び、家族や友人と話題にすることで、意識の輪が広がっていきます。SNSでの情報シェアや、質の高い教育の一環として子どもたちに自然の大切さを伝えることも、長期的に大きな変化を生み出す力を持っています。

🌱
今日から始められるアクション
買い物のときにFSC認証マークを探す → 地元の農産物を意識して選ぶ → 使い捨て製品を減らす → 地域の自然保全活動を調べてみる。小さな行動の積み重ねが、確実に陸の豊かさを守る力になります。

1

知る

SDGs目標15の内容と現状を理解する

2

選ぶ

認証製品や地産地消など消費行動を見直す

3

行動する

植樹や保全活動への参加、情報発信を行う

企業や自治体の先進的な取り組み事例

個人の行動に加えて、企業や自治体レベルでの取り組みも着実に広がっています。

企業による森林保全活動

日本国内では、多くの企業がCSR(企業の社会的責任)活動の一環として森林保全に取り組んでいます。社有林の持続可能な管理、従業員参加型の植樹活動、FSC認証の取得など、その形態はさまざまです。

特に注目されているのが、「企業版ふるさと納税」を活用した森林保全への資金提供や、カーボンオフセットの一環としての植林プロジェクトです。これまでの取り組みで感じているのは、環境保全と経済活動は対立するものではなく、むしろ長期的には企業価値を高める投資になるということです。

自治体の生態系回復プロジェクト

各地の自治体では、劣化した生態系の回復に向けた取り組みが進んでいます。湿地の再生、河川の自然護岸化、里山の再生プロジェクトなど、地域の特性に応じた多様なアプローチが採用されています。

北海道の釧路湿原では、かつて農地開発で失われた湿原の再生事業が進められており、湿原面積の回復とともに、タンチョウなどの野生生物の生息環境も改善しています。

💡 実体験から学んだこと
さまざまな企業の環境報告書を読んでいて気づいたのは、「陸の豊かさを守ろう」に真剣に取り組んでいる企業は、他のSDGs目標にも積極的であることが多いということです。生態系の保全は、気候変動対策、水資源の保全、持続可能な農業など、複数の目標を同時に前進させる「レバレッジポイント」になり得ます。

陸の豊かさを守ろうと他のSDGs目標とのつながり

目標15は、他のSDGs目標と密接に関連しています。この「つながり」を理解することで、より効果的なアクションが見えてきます。

目標13「気候変動に具体的な対策を」との関連は特に強力です。森林は巨大な炭素吸収源であり、森林の保全は気候変動の緩和に直結します。逆に、気候変動による気温上昇や降水パターンの変化は、森林火災や生態系の変化を引き起こし、陸の豊かさを脅かします。

目標1「貧困をなくそう」とのつながりも見逃せません。世界の最貧層の多くは、森林資源や農地に生計を依存しています。土地の劣化は彼らの生活基盤を直接奪うことになります。

目標16「平和と公正をすべての人に」との関連も重要です。資源をめぐる紛争や、環境難民の問題は、平和と安全保障に直結する課題です。陸の豊かさを守ることは、社会の安定にも貢献するのです。

陸の豊かさを守ろうに関するよくある質問

SDGs目標15は具体的にどんな問題を解決しようとしているのですか

目標15は、主に3つの問題に取り組んでいます。第一に、森林の減少と劣化の阻止。第二に、砂漠化と土地の劣化への対処と回復。第三に、生物多様性の損失の阻止です。これらはすべて相互に関連しており、一つの問題の解決が他の問題の改善にもつながります。12のターゲットが設定されており、2030年までの達成を目指しています。

個人レベルで陸の豊かさを守るために最も効果的な行動は何ですか

最も効果的なのは、消費行動の見直しです。FSC認証製品の選択、地産地消の実践、使い捨て製品の削減は、日常的に実践できる上に、市場を通じて企業の行動にも影響を与えます。また、地域の自然保全活動への参加や、問題について周囲に伝えることも、長期的に大きなインパクトを持ちます。完璧を目指す必要はなく、できることから少しずつ始めることが大切です。

日本は陸の豊かさの面でどのような課題を抱えていますか

日本は森林率67%と世界的にも高い水準にありますが、人工林の管理不足、里山の放棄、外来種の侵入、都市化による生息地の分断など、質の面での課題を多く抱えています。また、約3,700種以上の動植物が絶滅危惧種に指定されており、生物多様性の保全は喫緊の課題です。森林の「量」だけでなく「質」を高めていくことが求められています。

企業がSDGs目標15に取り組むメリットは何ですか

企業にとってのメリットは多岐にわたります。サプライチェーンのリスク低減(原材料の持続可能な調達)、企業ブランドの向上、ESG投資の呼び込み、従業員のエンゲージメント向上などが挙げられます。また、カーボンクレジットの取得や、生態系サービスへの投資は、長期的なコスト削減にもつながります。環境保全は「コスト」ではなく「投資」として捉える企業が増えています。

陸の豊かさを守ろうの達成状況は現在どの程度ですか

残念ながら、目標15の達成状況は十分とは言えません。国連の報告によると、森林面積の減少速度は鈍化しているものの、依然として毎年大規模な森林が失われています。生物多様性の損失も続いており、多くのターゲットが2030年の期限までに達成が困難とされています。ただし、保護区の拡大、国際的な協力体制の強化、市民意識の向上など、ポジティブな変化も確実に起きています。諦めるのではなく、取り組みを加速させることが重要です。

まとめ

「陸の豊かさを守ろう」は、私たちの生活基盤そのものを守るための目標です。

森林の保全、砂漠化への対処、生物多様性の保全という3つの柱は、気候変動対策や貧困問題とも深く結びついています。世界では毎年約1,000万ヘクタールの森林が失われ、約100万種の生物が絶滅の危機に瀕しているという現実は、決して他人事ではありません。

しかし、悲観するだけでは何も変わりません。

FSC認証製品を選ぶ、地産地消を心がける、地域の自然保全活動に参加する、そして問題を知り周囲に伝える。こうした一つひとつの行動が、確実に陸の豊かさを守る力になります。大切なのは、完璧を目指すことではなく、今日できることから始めること。私たち一人ひとりの小さな選択の積み重ねが、未来の地球の姿を決めていくのです。