海の豊かさを守ろう取り組み日本の事例を徹底解説

日本は四方を海に囲まれた島国であり、古くから海の恵みとともに暮らしてきました。しかし近年、海洋プラスチックごみの増加、サンゴ礁の白化、水産資源の減少など、私たちの海は深刻な危機に直面しています。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標14「海の豊かさを守ろう」は、まさに日本にとって切実なテーマです。
個人的な経験では、海岸清掃のボランティアに参加した際、わずか1時間で大型ごみ袋が何袋も埋まる現実を目の当たりにしました。海の問題は決して遠い話ではなく、私たちの日常と直結しています。
この記事では、日本で実際に行われている「海の豊かさを守る取り組み」を、政府・企業・個人のレベルで包括的にお伝えします。
この記事で学べること
- 日本周辺の海洋ごみは年間推定数百万トン規模で深刻化が進んでいる
- SDGs目標14には10のターゲットがあり日本は複数分野で課題を抱えている
- レジ袋有料化やプラスチック資源循環法など政府の法整備が加速している
- トヨタや日本製紙など大手企業が海洋保全に本格参入している
- マイボトル持参やエコ洗剤の選択など個人でも今日から実践できる行動がある
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは何か
SDGs目標14は、正式には「海の豊かさを守ろう(Life Below Water)」と呼ばれています。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標17項目のうちの一つで、海洋と海洋資源を持続可能な形で保全し、利用することを目指しています。
この目標には10のターゲットが設定されています。
具体的には、海洋汚染の防止、海洋・沿岸の生態系の保護、海洋酸性化の最小化、水産資源の持続的な管理、沿岸・海域の保全面積の拡大などが含まれます。
日本にとってこの目標が特に重要な理由は明確です。日本の排他的経済水域(EEZ)は世界第6位の広さを誇り、水産業は地域経済の柱となっている地域が数多くあります。海の健康は、日本の食文化や経済と切り離せない関係にあるのです。
日本の海が直面している深刻な課題

海の豊かさを守る取り組みを理解するには、まず現状の課題を正確に把握する必要があります。日本の海は、複数の問題が同時進行しています。
海洋プラスチックごみの深刻化
世界全体で毎年約800万トンのプラスチックごみが海に流出しているとされています。日本も例外ではなく、海岸に漂着するごみの多くがプラスチック製品です。
ペットボトル、レジ袋、食品容器、漁網の破片など、種類は多岐にわたります。特に問題視されているのがマイクロプラスチック(5mm以下の微細なプラスチック片)で、海洋生物の体内に蓄積し、食物連鎖を通じて人間の健康にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。
水産資源の減少
日本の漁獲量は1980年代のピーク時と比較して大幅に減少しています。サンマ、スルメイカ、サケなど、日本の食卓に馴染みの深い魚種が軒並み不漁となっている現実があります。
乱獲だけでなく、海水温の上昇による魚の分布域の変化も大きな要因です。
サンゴ礁の白化と海洋生態系の劣化
沖縄をはじめとする日本のサンゴ礁は、海水温の上昇により大規模な白化現象が繰り返し発生しています。サンゴ礁は「海の熱帯雨林」とも呼ばれ、多くの海洋生物の生息地となっているため、その劣化は生態系全体に波及します。
海洋酸性化の進行
大気中のCO2濃度の上昇に伴い、海水のpHが低下する海洋酸性化が進んでいます。これは貝類やサンゴなど、�ite酸カルシウムの殻や骨格を持つ生物に深刻な影響を与えます。
日本政府による海洋保全の取り組み

日本政府は、法整備と政策の両面から海の豊かさを守る取り組みを進めています。近年、その動きは加速しています。
レジ袋有料化とプラスチック資源循環促進法
2020年7月から全国でレジ袋の有料化がスタートしました。これにより、消費者のプラスチック使用に対する意識が大きく変わったと言われています。
さらに2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行されました。この法律は、プラスチック製品の設計段階から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を対象としており、使い捨てプラスチック(スプーン、フォーク、ストローなど)の削減を事業者に求めています。
海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
日本政府は2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定しました。このプランでは、新たな海洋プラスチックごみの流出をゼロにすることを目標に掲げ、以下の取り組みを推進しています。
アクションプランの主要施策
水産資源管理の強化
2018年に改正された漁業法では、科学的根拠に基づく水産資源管理が強化されました。TAC(漁獲可能量)制度の対象魚種の拡大や、MSY(最大持続生産量)の考え方に基づく資源管理目標の設定が進められています。
これまでの取り組みで感じているのは、法整備は着実に進んでいるものの、実際の運用と効果検証にはまだ時間がかかるということです。
海洋保護区の設定
日本は沿岸・海域の生物多様性を守るため、海洋保護区の設定を進めています。環境省や水産庁が中心となり、重要な海域の特定と保全措置の実施に取り組んでいます。ただし、海の豊かさを守ろうの現状を見ると、保護区の面積割合は国際的な目標と比較してまだ十分とは言えない状況です。
企業による海洋保全の先進的な取り組み事例

日本の企業も、事業活動を通じて海の豊かさを守る取り組みを積極的に展開しています。業種を問わず、多様なアプローチが生まれています。
自動車メーカーの取り組み
トヨタ自動車は、工場排水の水質管理を徹底するとともに、水素燃料電池車の開発を通じてCO2排出削減に貢献しています。CO2排出量の削減は、海洋酸性化の抑制にもつながる重要な取り組みです。
また、各地の工場周辺での環境保全活動として、河川清掃や植林活動を実施し、海に流れ込む汚染物質の削減にも取り組んでいます。
製紙・素材メーカーの取り組み
日本製紙グループは、プラスチック容器の代替となる紙製バリア素材の開発に力を入れています。食品包装などで使われるプラスチックを紙に置き換えることで、海洋プラスチックごみの根本的な削減を目指しています。
このような素材開発は、リデュースの考え方の実践例としても注目されています。
食品・飲料メーカーの取り組み
サントリーグループは「水と生きる」を企業理念に掲げ、水源涵養活動や容器のリサイクル推進に取り組んでいます。ペットボトルの100%リサイクル化を目標とし、「ボトルtoボトル」の循環システムの構築を進めています。
日本コカ・コーラも同様に、2030年までに国内で販売するすべてのペットボトルに100%サスティナブル素材を使用する目標を掲げています。
漁業・水産業界の取り組み
水産業界では、MSC認証(海のエコラベル)やASC認証の取得を目指す企業が増えています。持続可能な漁業・養殖業の証明となるこれらの認証は、消費者が環境に配慮した水産物を選ぶ際の指標になります。
マルハニチロやニッスイなどの大手水産企業は、資源管理型漁業への転換や、養殖技術の高度化を通じて、海洋資源の持続的利用に取り組んでいます。
企業の取り組みの効果
- 代替素材の開発でプラスチック使用量を大幅削減
- リサイクルシステムの構築で循環型経済を推進
- 認証制度の普及で消費者の選択肢が拡大
残る課題
- 代替素材のコストが高く中小企業への普及が遅い
- リサイクル率の向上には消費者の協力が不可欠
- 認証水産物の国内認知度がまだ低い
自治体やNPOによる地域密着型の取り組み
全国各地で、自治体やNPO・市民団体が地域の特性を活かした海洋保全活動を展開しています。
海岸清掃・ビーチクリーン活動
全国の沿岸自治体では、定期的な海岸清掃活動が行われています。特に「海と日本プロジェクト」(日本財団)は、全国規模で海洋ごみの削減や海の環境教育を推進する大規模な取り組みです。
地域のボランティア団体による定期的なビーチクリーン活動も各地で活発に行われており、回収したごみのデータを記録・分析することで、汚染源の特定や対策の立案にも役立てられています。
サンゴ礁の再生プロジェクト
沖縄県では、白化したサンゴ礁の再生に向けた取り組みが進んでいます。サンゴの苗を育てて海に植え付ける「サンゴ植え付け活動」は、ダイビングショップやNPOが中心となって実施しており、観光客も参加できるプログラムとして人気を集めています。
里海づくりの推進
「里海」とは、人の手が適切に加わることで生物多様性や生産性が高くなった沿岸海域のことです。瀬戸内海の「里海づくり」は日本を代表する取り組みで、藻場・干潟の再生、栄養塩管理、環境モニタリングなどを地域ぐるみで実施しています。
里海の考え方は、日本が世界に発信できる独自の海洋保全モデルとして国際的にも注目されています。
私たちが日常生活でできる具体的な行動
海の豊かさを守る取り組みは、政府や企業だけの仕事ではありません。一人ひとりの日常的な行動が、大きな変化につながります。
プラスチック使用量を減らす
最も身近で効果的な行動は、使い捨てプラスチックの使用を減らすことです。
マイバッグ、マイボトル、マイ箸を持ち歩くだけで、年間で相当量のプラスチックごみを削減できます。また、過剰包装の商品を避け、量り売りやリフィル(詰め替え)商品を選ぶことも有効です。
こうした行動はリデュースの身近な例としても実践しやすいものばかりです。
環境に配慮した製品を選ぶ
洗剤やシャンプーなどの日用品を選ぶ際に、環境負荷の少ない製品を選ぶことも重要です。合成界面活性剤を含む製品は、排水を通じて最終的に海に流れ込みます。
MSC認証やASC認証のラベルがついた水産物を意識的に選ぶことで、持続可能な漁業を応援することもできます。
ビーチクリーンやボランティアに参加する
各地で開催されているビーチクリーン活動に参加することは、直接的な海洋保全につながります。家族や友人と一緒に参加すれば、環境意識を共有する良い機会にもなります。
正しい知識を身につけて発信する
海の現状や課題について正しい知識を持ち、SNSや日常会話を通じて周囲に伝えることも立派な取り組みです。SDGsのために私たちにできることは、知ることから始まります。
知る
海の現状と課題について正しい情報を学ぶ
減らす
使い捨てプラスチックを意識的に減らす生活へ
選ぶ
環境配慮型の製品や認証水産物を選択する
伝える
学んだことを周囲やSNSで発信・共有する
海の豊かさを守ることと他のSDGs目標とのつながり
海の豊かさを守る取り組みは、他のSDGs目標とも密接に関連しています。この相互関係を理解することで、取り組みの意義がより深く見えてきます。
目標13「気候変動に具体的な対策を」との関係は特に強く、CO2排出削減は海洋酸性化の抑制に直結します。SDGs目標13の取り組みを進めることは、同時に海を守ることにもつながるのです。
また、陸の豊かさを守ろう(目標15)との関連も見逃せません。森林の保全は河川を通じて海に流れ込む土砂や汚染物質を減らし、海洋環境の改善に貢献します。山と海は水循環を通じてつながっているからです。
さらに、持続可能な漁業は沿岸地域の貧困削減(目標1)にもつながり、海洋環境教育は質の高い教育(目標4)の一部でもあります。
日本の海洋保全における今後の展望と課題
日本の海の豊かさを守る取り組みは着実に進んでいますが、まだ多くの課題が残されています。
技術革新への期待
海洋プラスチックごみの回収技術、生分解性プラスチックの開発、AIを活用した水産資源管理など、テクノロジーの進歩が海洋保全を加速させる可能性があります。日本の技術力を活かした革新的なソリューションが期待されています。
国際協力の重要性
海洋問題は一国だけでは解決できません。特に海洋ごみは国境を越えて漂流するため、近隣諸国との協力が不可欠です。日本はG7やG20の場で海洋プラスチック問題を主要議題として取り上げ、国際的なルール作りをリードしてきました。
消費者意識のさらなる向上
すべてのケースに適用できるわけではありませんが、環境を守る取り組みの多くは、消費者の意識と行動の変化が成功の鍵を握っています。教育やメディアを通じた啓発活動の継続が重要です。
現実的には、法整備・技術革新・市民意識の3つが同時に進むことで、初めて本質的な海洋保全が実現するといえるでしょう。
よくある質問
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の具体的なターゲットは何ですか
SDGs目標14には10のターゲットがあります。主なものとして、2025年までにあらゆる種類の海洋汚染を防止・大幅削減すること、海洋・沿岸の生態系を持続的に管理・保護すること、海洋酸性化の影響を最小限にすること、乱獲を終了させ科学的な管理計画を実施すること、沿岸・海域の少なくとも10%を保全することなどが含まれています。
個人でできる取り組みで最も効果的なものは何ですか
最も手軽で効果的なのは、使い捨てプラスチックの削減です。マイバッグ・マイボトルの持参、過剰包装の回避、リフィル商品の選択などは今日から始められます。加えて、MSC認証の水産物を選ぶ、環境に配慮した洗剤を使う、ビーチクリーン活動に参加するなど、複数の行動を組み合わせることでより大きな効果が期待できます。
日本の海洋プラスチックごみ問題はどのくらい深刻ですか
日本は一人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量が世界的に見ても多い国の一つとされています。日本の海岸に漂着するごみの大部分がプラスチック製品であり、マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響も懸念されています。レジ袋有料化やプラスチック資源循環促進法の施行により改善の動きはありますが、根本的な解決にはまだ時間を要します。
企業の海洋保全活動に消費者として協力する方法はありますか
はい、いくつかの方法があります。MSC認証やASC認証のラベルがついた水産物を購入する、環境配慮型の包装を使用している企業の製品を選ぶ、リサイクルに積極的な企業を応援するなどが具体的な方法です。消費者の購買行動は企業の方針に大きな影響を与えるため、「選ぶ」という行為自体が海洋保全への参加になります。
海の豊かさを守ることは気候変動対策とどう関係していますか
海は地球上のCO2の約30%を吸収する巨大な「炭素の吸収源」です。そのため、海洋環境の健全性を維持することは気候変動対策に直結します。逆に、大気中のCO2が増加すると海洋酸性化が進み、海の生態系に悪影響を及ぼします。つまり、気候変動対策と海洋保全は表裏一体の関係にあり、両方を同時に進めることが重要です。