SDGs13の取り組み事例を徹底解説

気候変動の影響は、もはや遠い未来の話ではありません。毎年のように記録的な猛暑や豪雨が日本各地を襲い、「今、何かしなければ」という危機感を多くの方が感じているのではないでしょうか。SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」は、まさにその危機感に応えるための国際的な枠組みです。
しかし、「具体的に何をすればいいのか」「実際にどんな取り組みが行われているのか」がわからないという声も少なくありません。個人的にSDGsに関連する取り組みを調べてきた中で感じるのは、日本では政府・企業・地域それぞれのレベルで、想像以上に多様な気候変動対策が進んでいるということです。
この記事では、SDGs13(気候変動に具体的な対策を)の具体的な取り組み事例を、政府・企業・地域・国際協力の4つの視点から網羅的にご紹介します。
この記事で学べること
- 日本政府は2030年度にGHG排出量26%削減、2050年に80%削減を目標としている
- 積水ハウスは注文住宅の70%以上をZEH(ゼロエネルギー住宅)で達成済み
- ダイキン工業はGHG排出量を2005年比で70%削減する目標を設定している
- 日本のJCM(二国間クレジット制度)は2030年までに累計5,000万〜1億tCO2の削減を見込む
- 企業・自治体・個人それぞれが今日から始められる具体的アクションがある
SDGs目標13とは何か
SDGs目標13は、正式名称を「気候変動に具体的な対策を」といいます。
地球温暖化による気温上昇、海面上昇、異常気象の頻発など、気候変動がもたらす深刻な影響に対して、緩和策(排出削減)と適応策(影響への備え)の両面から行動を求める目標です。パリ協定で定められた「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑える」という国際目標とも密接に関連しています。
気候変動に具体的な対策を(SDGs13の背景)を理解した上で、ここからは実際の取り組み事例を見ていきましょう。
日本政府による気候変動対策の全体像

日本政府は、SDGs13の達成に向けて複数の野心的な目標を掲げています。
温室効果ガス削減の中長期目標
日本は2030年度までにGHG(温室効果ガス)排出量を2013年度比で26%削減する中期目標と、2050年までに80%削減する長期目標を設定しています。さらに、今世紀後半には「脱炭素社会」の実現を目指すという方針を明確に打ち出しています。
この枠組みの特徴は、「環境と成長の好循環」を基本理念に据えている点です。環境対策を経済成長の足かせではなく、ビジネス主導の破壊的イノベーションによって新たな成長機会に転換するという考え方が根底にあります。
革新的環境イノベーション戦略
日本政府が策定した「革新的環境イノベーション戦略」は、気候変動対策を3つの柱で推進する包括的な枠組みです。
第1の柱:イノベーション・アクションプランでは、16の技術課題に対してコスト目標を設定しています。具体的には、再生可能エネルギーの主力電源化、堅牢なデジタル電力ネットワークの構築、低コスト水素サプライチェーンの整備、グリーンモビリティの実現などが含まれます。
第2の柱:アクセラレーションプランは、研究体制の整備と投資促進を定めるものです。
第3の柱:ゼロエミッション・イニシアティブは、世界のリーダーと共同で実装を進める国際連携の枠組みです。
これまでの取り組みを見てきた中で気づくのは、日本の戦略が「技術開発」「投資促進」「国際協力」の3層構造になっている点です。単に目標を掲げるだけでなく、実現のための具体的な道筋を描いているところに特徴があります。
企業によるSDGs13の取り組み事例

政府の枠組みに呼応する形で、日本企業も積極的な気候変動対策を展開しています。ここでは、特に注目すべき具体的な事例をご紹介します。
積水ハウスのZEH(ゼロエネルギー住宅)推進
日本最大の住宅メーカーである積水ハウスは、SDGs13の取り組みとして注文住宅戸建ての70%以上をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)で実現しています。
ZEHとは、断熱性能の向上と高効率設備の導入、そして太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用により、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロにする住宅のことです。簡単に言えば、「使うエネルギーを自分で作り出せる家」です。
日本政府は2020年までに新築公共施設のZEB化、2030年までに新築建築物全体のZEB・ZEH化を目標としていますが、積水ハウスはこの目標に先駆けて大きな成果を上げています。住宅という日常生活に密接な分野で、気候変動対策と快適な暮らしの両立を実証している点が高く評価されています。
ダイキン工業のGHG排出削減
世界ナンバーワンの空調機器メーカーであるダイキン工業は、2005年比でGHG排出量を70%削減するという目標を掲げています。
空調機器は私たちの生活に不可欠ですが、同時にエネルギー消費量が大きい製品でもあります。ダイキン工業が注目されるのは、自社の事業活動における排出削減だけでなく、省エネ性能の高い製品を世界中に提供することで、使用段階での排出削減にも貢献している点です。
エアコンの需要は気候変動による気温上昇で今後も増加が見込まれます。その中で、製品の省エネ性能を飛躍的に高めることは、気候変動の緩和策として非常に大きなインパクトを持つ取り組みです。
Japan Climate Initiative(JCI)の取り組み
個別企業の取り組みに加えて、組織横断的な動きも活発化しています。
Japan Climate Initiative(JCI)は、脱炭素化に向けた取り組みを強化することを宣言した企業・自治体・団体のネットワークです。2020年1月時点で142の企業、21の自治体、58の団体が参加しています。
JCIの特徴は、政府の目標に加えて、非国家アクター(企業や自治体)が自主的に気候変動対策にコミットするプラットフォームとしての役割を果たしている点です。参加組織同士が知見を共有し、互いに刺激し合うことで、個別の取り組みでは生まれにくい相乗効果を生み出しています。
ソーラーファームシステムによる農業イノベーション
気候変動対策と農業を融合させた革新的な取り組みも進んでいます。
特許取得済みの半透明ソーラーパネルをビニールハウスに設置する「ソーラーファームシステム」は、農業を続けながら発電も行うという一石二鳥の仕組みです。気候変動の「適応策」と「緩和策」を同時に実現するモデルとして注目されています。
農業分野は気候変動の影響を最も受けやすい産業の一つです。こうした技術革新は、食料安全保障と脱炭素化の両立という難題に対する具体的な解決策を示しています。
地域・コミュニティレベルの取り組み事例

SDGs13の取り組みは、大企業や政府だけのものではありません。地域やイベントレベルでも、創意工夫にあふれた事例が生まれています。
デロイト トーマツグループのゼロウェイストイベント
2022年に東京で開催されたデロイト トーマツグループ主催のイベントは、1,000人規模の対面イベントでありながら、廃棄物ゼロを目指した先進的な取り組みを実施しました。
具体的には以下の5つの施策が導入されています。
食べられるカップ
エコカフェで食べられるカップを使用し、使い捨て容器をゼロに
100%リサイクル家具
会場の家具をすべてリサイクル素材で製作
再利用可能バナー
イベントバナーを再利用可能な素材で作成
さらに、余った食品はフードバンクとの提携により寄付され、会場装飾には天然の植物が使用されました。
このイベントが示しているのは、大規模イベントでも工夫次第で廃棄物を大幅に削減できるという事実です。企業の社内イベントや地域の催し物にも応用できるアイデアが多く含まれています。
国際協力を通じたSDGs13の取り組み
気候変動は国境を越えた課題です。日本は国際協力を通じて、途上国の気候変動対策も積極的に支援しています。
二国間クレジット制度(JCM)の成果
2013年から運用されているJCM(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)は、日本の優れた低炭素技術を途上国に普及させることで、両国のGHG排出削減に貢献する仕組みです。
JCMの仕組みを簡単に説明すると、日本企業が途上国に省エネ設備や再生可能エネルギー技術を導入し、それによって削減されたCO2排出量を日本の削減分としてもカウントできるというものです。途上国は最新技術を導入でき、日本は削減目標の達成に近づけるという、双方にメリットがある制度設計になっています。
JCMによる2030年までの累計排出削減量は、5,000万〜1億tCO2と見込まれています。
途上国への包括的支援
JCM以外にも、日本は途上国に対して多面的な気候変動対策支援を行っています。
日本の国際支援の4つの柱
特にASEAN諸国との「モデル都市プログラム」は、急速な都市化が進む東南アジアにおいて、持続可能な都市開発のモデルケースを共同で構築する取り組みです。日本が高度経済成長期に経験した公害問題とその克服の知見が、途上国の「環境と成長の両立」に大きく役立っています。
技術イノベーションによる気候変動対策
SDGs13の達成において、技術革新は不可欠な要素です。日本が特に力を入れている技術分野を見ていきましょう。
ZEB・ZEHの普及推進
先ほど積水ハウスの事例でも触れましたが、建築分野のゼロエネルギー化は日本の気候変動対策の重要な柱です。
日本政府は以下のロードマップを設定しています。
ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)とは、建物の使用エネルギーを省エネ技術と再生可能エネルギーで相殺し、年間のエネルギー消費量を実質ゼロにする建築物のことです。オフィスビルや商業施設など、大規模建築物への適用が進んでいます。
革新的環境イノベーション戦略の16の技術課題
日本政府が設定した16の技術課題の中から、特に重要な4つの分野をご紹介します。
再生可能エネルギーの主力電源化は、太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーを、安定的かつ低コストで供給できる主力電源に育てる取り組みです。SDGs7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)とも深く関連しています。
堅牢なデジタル電力ネットワークは、AIやIoTを活用して電力の需給バランスを最適化し、再生可能エネルギーの変動にも対応できるスマートグリッドの構築を目指すものです。
低コスト水素サプライチェーンは、水素を安価に製造・輸送・貯蔵する技術の確立です。水素は燃焼時にCO2を排出しないクリーンエネルギーとして期待されています。
グリーンモビリティは、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の普及、さらには物流の効率化を通じて、交通分野の脱炭素化を進める取り組みです。
SDGs13の取り組みを比較する視点
ここまでご紹介した取り組み事例を、規模・アプローチ・効果の観点から整理してみましょう。
大規模取り組みの強み
- 数値目標が明確で進捗を測定しやすい
- 技術開発への大規模投資が可能
- 国際的な影響力と波及効果が大きい
- 制度設計により継続性が担保される
地域・個人の取り組みの強み
- すぐに始められる即効性がある
- 地域の実情に合わせた柔軟な対応が可能
- 参加者の意識変革につながりやすい
- 他の地域への横展開がしやすい
重要なのは、これらの取り組みが「どちらが優れているか」ではなく、それぞれの規模とアプローチが相互に補完し合っているという点です。政府の大きな枠組みがあるからこそ企業が動きやすくなり、企業の技術革新が地域の取り組みを後押しし、地域の実践が政策にフィードバックされるという好循環が生まれています。
私たちにできるSDGs13への貢献
SDGs13に私たちができることは、実は身近なところにたくさんあります。企業や政府の大きな取り組みだけでなく、一人ひとりの行動の積み重ねが気候変動対策を前進させます。
日常生活でできる気候変動対策
まず、エネルギー消費の見直しです。エコキュートなどのヒートポンプ技術を活用した省エネ設備の導入や、こまめな節電は、家庭からのCO2排出を直接的に削減します。
次に、リデュースの実践です。ゴミの削減は、廃棄物処理に伴うCO2排出の削減につながります。デロイト トーマツグループのゼロウェイストイベントのように、食べられるカップの使用やフードロスの削減など、具体的なアイデアを日常に取り入れることができます。
さらに、移動手段の選択も重要です。公共交通機関の利用、自転車通勤、カーシェアリングの活用など、移動に伴うCO2排出を減らす選択肢は多くあります。
企業・組織として取り組めること
企業規模に関わらず、以下のような取り組みが可能です。
オフィスの省エネ対策は、LED照明への切り替えや空調の適正管理など、比較的低コストで始められます。テレワークの推進も、通勤に伴うCO2排出の削減に貢献します。
サプライチェーン全体での排出削減も重要な視点です。自社だけでなく、取引先を含めた排出量の把握と削減目標の設定が、より大きな効果を生みます。
Japan Climate Initiative(JCI)のような業界横断的なネットワークへの参加も、知見の共有や取り組みの加速に効果的です。
環境を守る取り組みは、気候変動対策に限らず、陸の豊かさを守ることや海の豊かさを守ることにもつながっています。SDGs13の取り組みは、他の目標とも密接に関連していることを意識すると、より効果的な行動が取れるでしょう。
SDGs13の取り組み事例から見える今後の展望
ここまでご紹介してきた事例を俯瞰すると、日本のSDGs13への取り組みにはいくつかの重要なトレンドが見えてきます。
第一に、技術イノベーションと制度設計の両輪で進んでいることです。革新的環境イノベーション戦略のように、技術開発の目標と、JCMのような制度的な仕組みが組み合わさることで、実効性のある取り組みが生まれています。
第二に、官民連携の深化です。政府が大きな方向性を示し、企業が具体的な技術と資金で実現し、地域が現場レベルで実践するという多層的な構造が形成されつつあります。
第三に、国際協力の拡大です。気候変動は一国だけでは解決できない問題であり、JCMやASEAN諸国とのモデル都市プログラムのような国際的な取り組みの重要性は今後さらに高まるでしょう。
SDGs13の取り組みは、単なる環境対策ではなく、社会全体の変革を促すものです。政府・企業・地域・個人のそれぞれが自分の立場でできることを実践し、その取り組みが互いにつながることで、気候変動という地球規模の課題に立ち向かう力が生まれます。
よくある質問
SDGs13の取り組みは中小企業でも実践できますか
はい、企業規模に関わらず実践可能です。大規模な設備投資が必要な取り組みだけでなく、オフィスのLED化、ペーパーレス推進、テレワーク導入など、低コストで始められる施策は多くあります。また、Japan Climate Initiative(JCI)のようなネットワークに参加することで、他社の知見を活用しながら自社に合った取り組みを見つけることもできます。
ZEH(ゼロエネルギー住宅)は一般家庭でも導入できますか
導入可能です。積水ハウスをはじめ、多くのハウスメーカーがZEH対応の住宅を提供しています。初期費用は通常の住宅より高くなる傾向がありますが、光熱費の大幅な削減や各種補助金制度の活用により、長期的にはコストメリットが出るケースが多いとされています。新築だけでなく、既存住宅の断熱改修でもZEHに近い性能を実現できる場合があります。
JCM(二国間クレジット制度)に企業として参加するにはどうすればいいですか
JCMプロジェクトへの参加は、環境省や経済産業省が公募する補助事業を通じて行うのが一般的です。途上国への技術移転を伴うプロジェクトが対象となり、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの普及など、幅広い分野が対象になっています。まずは各省庁のJCM関連ウェブサイトで最新の公募情報を確認することをお勧めします。
個人レベルでSDGs13に貢献する効果的な方法は何ですか
最も効果が大きいのは、エネルギー消費の削減と再生可能エネルギーへの切り替えです。具体的には、省エネ家電への買い替え、自宅への太陽光パネル設置、電力会社の再エネプランへの切り替えなどが挙げられます。また、移動手段の見直し(公共交通機関の利用増加)や、食品ロスの削減も効果的です。SDGsへの個人の取り組みとして、まずは自分の生活で最もCO2排出が多い分野から改善を始めるのが効率的です。
SDGs13と他のSDGs目標はどのように関連していますか
SDGs13は、ほぼすべての他の目標と関連しています。特に密接なのは、SDGs7(エネルギー)、SDGs11(持続可能な都市)、SDGs14(海の豊かさ)、SDGs15(陸の豊かさ)です。例えば、再生可能エネルギーの普及はSDGs7と13の両方に貢献し、地球温暖化とSDGs13の関係は森林保全(SDGs15)や海洋保護(SDGs14)とも直結しています。気候変動対策を進めることは、結果として複数のSDGs目標の達成を後押しすることになります。