住み続けられるまちづくりを実現するための現状と課題を徹底解説

私たちが毎日を過ごす「まち」は、この先も安心して暮らし続けられる場所であり続けるでしょうか。人口が都市に集中し、地方では過疎化が進む今、「住み続けられるまちづくり」は決して遠い国の話ではありません。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」は、世界と日本の両方が抱える都市と地域の課題に向き合うためのゴールです。これまでSDGs関連の情報を整理してきた中で感じるのは、この目標が「防災」「高齢化」「交通」など、私たちの生活に最も密着したテーマを扱っているということです。
この記事では、目標11の定義から世界・日本の現状、具体的なターゲット、そして私たちにできることまでを、体系的にまとめました。
この記事で学べること
- 世界人口の約6割が都市に集中し、2030年にはさらに増加すると予測されている
- 日本では都市の過密と地方の過疎という「両極の課題」が同時進行している
- 目標11には11.1〜11.7の具体的ターゲットがあり住宅や防災を網羅している
- コンパクトシティや防災都市づくりなど日本でも実践的な取り組みが進んでいる
- 地域活動への参加や防災の備えなど個人でできることは意外と多い
住み続けられるまちづくりとは何か
SDGs目標11の趣旨は、「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」ことにあります。
少し言葉が難しいですね。ひとつずつ整理してみましょう。
「包摂的(ほうせつてき)」とは、誰一人取り残さないという考え方です。年齢や障がい、収入の違いにかかわらず、すべての人が安心して暮らせる状態を目指します。
「強靱(レジリエント)」とは、災害などが起きても柔軟に回復できる力を持ったまち。を意味します。地震や豪雨に見舞われても、素早く立ち直れる社会のことです。
つまりこの目標は、誰もが安全・安心で、長期的に持続可能な生活を続けられるまちをつくることを狙いとしています。具体的には、次のような要素が「住み続けられる」条件として挙げられています。
「住み続けられる」ための主な条件
世界が直面する都市化の現状と課題

いま世界では、急速な都市化が進んでいます。
複数の資料によると、世界人口の約6割がすでに都市に居住しており、2030年までにはさらに都市部への人口集中が進むと予測されています。人が集まること自体は経済的な活力を生みますが、その裏で深刻な課題も生まれています。
スラムの拡大とインフラ不足
都市へ移り住んだ人々のすべてが、安定した住まいを得られるわけではありません。住環境の整わない地域に人が集まり、スラム化が進行しています。
また、道路や上下水道、電力、公共交通といったインフラが住民の増加に追いつかず、生活の質を下げてしまう地域も少なくありません。
大気汚染と災害リスク
交通量の増加や工業化によって大気環境が悪化し、健康被害を生んでいる都市もあります。
さらに気候変動により、洪水・台風・豪雨などの自然災害が都市部を直撃するケースが増えています。こうした災害への向き合い方は、気候変動に具体的な対策をというテーマとも深くつながっています。
そして忘れてはならないのが、格差の問題です。貧困層や社会的弱者ほど、安全な住宅やサービスにアクセスできず、災害や治安のリスクにさらされやすいという現実があります。
日本が抱える都市と地方の課題

「住み続けられるまちづくり」は、日本にとっても切実なテーマです。日本の場合、都市と地方で正反対の課題が同時に進行しているのが特徴です。
都市の課題
- 人口集中による過密
- インフラの老朽化
- 災害時の被害拡大リスク
地方の課題
- 過疎化と限界集落の増加
- 高齢化と独居高齢者の増加
- 買い物難民や交通の不便
都市部では、高度経済成長期に整備された道路や橋、水道管などのインフラが老朽化し、更新の時期を迎えています。一方の地方では、若い世代が都市へ流出し、高齢者だけが残る「限界集落」が各地で生まれています。
買い物に行くお店が近くになくなり、日々の食料品を手に入れることさえ難しい「買い物難民」も社会問題となっています。
目標11の7つのターゲットを整理する

目標11は、11.1から11.7までの具体的なターゲットで構成されています。抽象的な目標を、生活に直結する項目まで落とし込んでいるのが特徴です。
こうして見ると、住宅から交通、防災、環境、公共空間まで、まちづくりのあらゆる側面を網羅していることが分かります。環境負荷を減らすという点では、リデュースとは(意味と具体例)で紹介されている考え方も、廃棄物削減の実践につながっています。
日本で進む取り組み事例
課題が多い一方で、日本各地では前向きな取り組みも進んでいます。
コンパクトシティの推進
コンパクトシティとは、住まいや商業施設、医療機関などを一定の範囲に集約し、車がなくても暮らしやすいまちをつくる考え方です。過疎化で広がりすぎた生活圏を、効率的にまとめ直す狙いがあります。
防災都市づくりと高齢者支援
災害の多い日本では、耐震化や避難ルートの整備といった防災都市づくりが各自治体で進んでいます。
また、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、見守りサービスや移動販売、地域交通の整備なども広がってきました。企業も、高齢化対応や交通インフラ整備といった形でまちづくりに関わり始めています。
私たちにできること
「まちづくり」と聞くと大きなテーマに感じますが、一人ひとりにできることも数多くあります。
地域活動への参加
地域の清掃活動やお祭りに参加し、コミュニティのつながりを育てる
災害への備え
避難場所の確認や防災グッズの準備で、レジリエントな暮らしをつくる
環境に配慮した暮らし
公共交通を使い、ごみを減らすことで環境負荷の低いまちに貢献する
こうした小さな行動の積み重ねが、まち全体を支えていきます。より広い視点での実践については、持続可能な社会のためにできることでも整理していますので、あわせて考えてみるとよいでしょう。SDGs全体の日本の立ち位置を知りたい方は、sdgs 達成度(日本と世界のランキング)も参考になります。
よくある質問
住み続けられるまちづくりとSDGsの他の目標は関係がありますか
はい、深く関係しています。目標11は防災(気候変動)、住宅(貧困)、公共空間(陸の豊かさ)など、多くの目標と重なり合っています。まちづくりはSDGs全体をつなぐハブのような役割を果たしています。
コンパクトシティにデメリットはありますか
集約によって、これまで住んでいた地域から移動を求められる場合があります。長年暮らした土地への愛着や、移転にともなうコストなど、住民の合意形成が課題となることも少なくありません。
企業はまちづくりにどう関われますか
高齢化への対応、災害対策の強化、交通インフラの整備、過密と過疎の是正など、さまざまな形で関わることができます。地域の課題を事業機会として捉える企業も増えています。
子どもでもできることはありますか
もちろんあります。地域の清掃活動に参加したり、ごみの分別を意識したり、防災訓練に真剣に取り組んだりすることも立派な貢献です。身近な行動から始めることが大切です。
「レジリエント」とは具体的にどういう状態ですか
災害などの困難が起きても、被害を最小限に抑え、素早く元の生活に戻れる力を持った状態を指します。耐震化された建物や、機能する避難計画などが、まちのレジリエンスを高めます。
まとめ
住み続けられるまちづくりの現状を見てくると、世界の急速な都市化と、日本特有の「過密と過疎」という課題が浮かび上がってきます。
けれども、コンパクトシティや防災都市づくりなど、前向きな取り組みも確実に進んでいます。そして何より、地域活動への参加や災害への備えといった、私たち一人ひとりの行動がまちを支えているのです。
まずは、自分の住むまちの防災マップを確認したり、地域の活動に一歩踏み出してみたりすることから始めてみませんか。小さな一歩の積み重ねが、次の世代にも「住み続けられるまち」を残す力になっていくはずです。